電気を売るために、まず通信環境を整える。四国電力が描く成長戦略と、その実現に必要な条件を読み解きます。
2026年10月31日|J-SCFI週末特別解説
- 🌏 電力会社が海底ケーブルに投資する、その意外な理由
- 📌 四国デジタルゲートウェイ構想で動き始めた3つの計画
- 🌊 徳島とアジアをつなぐ8,900kmの国際通信網
- ⚡ 四国電力が狙う「電力需要を自らつくる」という成長戦略
- 💰 海底ケーブルへの投資が、四国電力の利益につながるまで
- 🏛️ 国の政策が後押しする、四国の通信インフラ整備
- 📊 500億円以上の事業構想と、四国電力が負担する資金
- 🗾 徳島から四国4県へ広がる、新しい産業の可能性
- 🏢 北海道・九州とのデータセンター誘致競争
- ⚠️ 期待の裏側にある、投資回収と地域環境の課題
- 📈 現在の四国電力の業績と、将来の成長投資
- 🔍 新構想を企業価値につなげるための条件
- 🌱 電気を売る前に、電気を使う産業を育てるという発想
- 🌸 まとめ|四国電力の新戦略は、四国の未来を変えるか
🌏 電力会社が海底ケーブルに投資する、その意外な理由
電力会社が将来の売上を増やそうとするとき、どのような方法が考えられるでしょうか。
発電設備を増やす。電力の販売先を広げる。あるいは、新しい事業に参入する。
ところが、四国電力(9507)が2026年10月30日に発表したのは、少し意外な取り組みでした。
アジア各国を結ぶ国際海底通信ケーブルに出資・参画し、徳島県阿南市へ引き込むという計画です。
さらに、四国各地を結ぶ通信網を整備し、AIデータセンターなどの企業誘致につなげようとしています。
一見すると、電力会社の本業から離れた投資にも見えます。
しかし、今回の構想を詳しく調べていくと、通信インフラへの投資と電力会社の成長戦略が、一本の線でつながってきます。
その鍵となるのが、「電気を使う企業が進出しやすい環境を、自ら整える」という考え方です。
ただし、戦略として筋が通っていることと、実際に利益が生まれることは同じではありません。
今回の構想には、すでに具体化している取り組みがある一方、投資負担や収益化について未確定の部分も残っています。
四国電力の企業戦略を中心に、四国4県の経済にどのような変化が期待されるのか、そして投資家は何を確認していくべきなのかを考えていきます。
📌 四国デジタルゲートウェイ構想で動き始めた3つの計画
今回発表された「四国デジタルゲートウェイ構想」は、単に海底ケーブルを徳島へつなぐ計画ではありません。
四国電力が目指しているのは、国際通信網と四国内の通信網を整え、データセンターなどが立地しやすい環境をつくることです。
構想は、大きく3つの取り組みで構成されています。
| 取り組み | 主な内容 | 目指す効果 |
|---|---|---|
| 国際海底ケーブル | AUG Eastへの出資・参画、徳島県阿南市への陸揚げ | 四国と国際通信網の接続 |
| 四国内の通信網 | 大容量の陸上通信ネットワークを拡充 | 四国内の通信環境の改善 |
| 四国外との接続 | 大阪・福岡方面への複数ルートを整備 | 通信経路の多様化と信頼性向上 |
この3つを組み合わせることで、四国をデータセンターの立地候補として選んでもらいやすくする狙いがあります。
すでに進んでいることと、これからのこと
2026年10月30日時点では、国際海底ケーブル事業への参画と徳島への陸揚げ方針が公表されています。
また、関連する陸揚局や分岐支線の整備については、国の補助事業に採択されています。
一方、データセンターの具体的な進出企業や電力供給契約は、今回確認した公表資料では明らかになっていません。
| 項目 | 現時点の状況 |
|---|---|
| AUG Eastへの参画 | 公表済み |
| 徳島県阿南市への陸揚げ | 実施方針を公表 |
| 関連する国の補助事業 | 採択済み |
| 国際ケーブルの運用開始 | 2029年度中が目標 |
| 四国内通信網の整備 | 整備方針を公表 |
| 大規模データセンター誘致 | これから具体化 |
| 新事業の収益額 | 未確認 |
通信インフラの整備に向けた前進は確認できます。しかし、企業誘致や利益の増加まで確定したわけではありません。
この違いが、今回の構想を評価する出発点になります。
🌊 徳島とアジアをつなぐ8,900kmの国際通信網
今回、四国電力が参画するのは「Asia United Gateway East(AUG East)」という国際海底通信ケーブル計画です。
日本とシンガポールを、韓国、台湾、フィリピン、マレーシアなどのアジア各国・地域を経由して結ぶプロジェクトで、総延長は約8,900kmに及びます。
建設事業者はNECです。
2026年10月30日の四国電力の資料には、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Singtelなどとともに、四国電力もコンソーシアムの参加企業として記載されています。
ただし、四国電力が8,900kmのケーブル全体を単独で建設するわけではありません。
国際プロジェクトに参画し、その分岐支線を徳島県阿南市へ引き込む計画です。
また、AWSやMicrosoftが参加していることと、これらの企業が四国にデータセンターを建設することは別です。
今回の資料から、両社の四国進出が決まったと判断することはできません。

海底ケーブルがデータセンター立地を左右する理由
私たちが日常的に利用しているクラウドサービスや動画配信、生成AIなどは、大量のデータ通信によって支えられています。
国際通信の重要な役割を担っているのが、海底に敷設された光ファイバーケーブルです。
データセンターにとっても、通信環境は電力と並ぶ重要な立地条件になります。
例えば、四国に大規模なAIデータセンターを建設したとしても、海外の利用者や他のデータセンターとの間で、大量のデータを安定して送受信できなければ、事業運営に支障が生じる可能性があります。
さらに、通信障害が発生したときに備え、複数の通信経路を確保することも重要です。
今回の構想では、徳島への国際海底ケーブルの陸揚げだけでなく、四国内の通信網や大阪・福岡方面への複数ルートの整備も計画されています。
海底ケーブルをつなぐことが最終目的ではなく、データセンターが利用できる通信環境を、四国全体で整えていくことが重要なのです。
⚡ 四国電力が狙う「電力需要を自らつくる」という成長戦略
ここから、電力会社としての四国電力の戦略が見えてきます。
四国電力の公式資料では、現在の四国には国際海底ケーブルの陸揚局がなく、大容量の基幹通信網などが十分に整備されていないことが、データセンター立地の障壁として説明されています。
つまり、四国に電力を供給する設備があっても、通信環境が十分でなければ、大規模データセンターの誘致は難しくなります。
そこで四国電力は、企業誘致を妨げている通信インフラの課題に、自ら取り組もうとしているのです。

電気を売る前に、電気を使う企業を呼び込む
例えば、ある地域に大きな工場を誘致しようとしても、道路が整備されていなければ、原材料や製品を運ぶことが難しくなります。
そのため、まず道路を整備し、企業が進出しやすい環境をつくります。
今回の通信インフラ整備も、それに似た考え方です。
四国電力が主に販売しているのは電力ですが、その電力を使う企業が進出するためには、通信という別のインフラが必要でした。
電力需要を増やすために、まず通信環境を整える。
一見すると遠回りに見える投資ですが、企業誘致を進めるうえでは合理的な発想と考えられます。
ただし、道路が整備されても必ず工場が建つとは限らないように、通信環境が整っても、データセンターの進出が保証されるわけではありません。
今回の構想は、電力需要を確実に増やす投資ではなく、新しい需要が生まれる可能性を高めるための先行投資と捉えるのが適切でしょう。
四国電力の電力販売にも変化が見られる
2026年度上期の四国電力の小売販売電力量は、前年同期比7.0%減少しました。
一方、卸販売電力量は26.0%増加し、総販売電力量は4.5%増加しています。
小売販売電力量の減少には、契約電力の減少や前年夏季の高気温の反動などが影響しています。
この数字だけで、四国電力の電力需要全体が減少していると結論づけることはできません。
それでも、電力会社にとって、将来の新しい需要をどのように確保するかは重要な経営課題です。
今回の構想は、その選択肢の一つとして注目できます。
💰 海底ケーブルへの投資が、四国電力の利益につながるまで
ここで、企業分析として最も重要な部分に進みます。
通信インフラを整備することには意味がありますが、投資家にとって気になるのは、その投資がどのように利益へつながるかです。
今回の構想には、大きく3つの収益機会が考えられます。

① 海底ケーブル・通信関連事業からの収益
四国電力は、国際海底ケーブル事業への出資・参画と通信網整備を進めます。
そのため、通信関連事業から収益を得る可能性があります。
ただし、出資比率、取得する通信容量、利用権、収益分配の仕組みなどは、今回確認した資料では明らかになっていません。
現時点では、通信関連事業がどの程度の利益を生み出すかを計算することはできません。
② データセンターへの電力販売
こちらは、四国電力の既存事業と直接つながる収益機会です。
データセンターでは、サーバーや冷却設備を稼働させるために、大量の電力が必要になります。
四国にデータセンターが進出し、四国電力との電力供給契約が成立すれば、新しい販売先を獲得することにつながります。
ただし、電力販売量が増えても、利益が同じ割合で増えるわけではありません。
電力調達費用や設備増強費用、契約条件などによって、収益性は変わります。
③ データセンター事業そのものへの参入
四国電力は、愛媛県南予地域で生成AI向けデータセンター事業を検討しています。
さらに、伊方発電所を中心とした愛媛県内の脱炭素電源を活用し、県内のデータセンターなどへ電力を供給する仕組みについても検討を始めています。
2026年11月1日には、社内に「愛媛データセンタープロジェクトチーム」を設置する予定です。
事業化が実現すれば、電力販売に加えて、データセンター関連の新しい収益源を持つ可能性があります。
一方、データセンターの建設・運営には、多額の設備投資や顧客獲得が必要です。
現時点では事業化を検討している段階であり、利益の見通しは明らかになっていません。
3つの収益機会を整理すると
| 収益機会 | 利益が生まれる条件 | 現時点の状況 |
|---|---|---|
| 通信関連事業 | 利用契約や収益分配などが成立 | 具体的な収益条件は未確認 |
| 電力販売 | DC進出と電力供給契約が成立 | 誘致段階 |
| DC事業の運営 | 事業化し、運営収入が費用を上回る | 検討段階 |
この3つを分けて考えると、四国電力の戦略がよりはっきりします。
通信インフラ整備は、単独の収益事業になる可能性があるだけでなく、既存の電力事業や将来のデータセンター事業を広げるための基盤にもなり得ます。
ただし、収益機会が複数あることと、十分な利益が確保できることは別です。
投資採算を評価するには、今後の契約や事業計画の開示が必要になります。
🏛️ 国の政策が後押しする、四国の通信インフラ整備
今回の構想には、国のデジタルインフラ政策とのつながりもあります。
政府は、データセンターの地方分散や、電力インフラと通信インフラを連携させる「ワット・ビット連携」を進めています。
データセンターを特定の都市部に集中させるのではなく、電力や通信の条件を整えながら地方への分散を促す考え方です。
四国電力の取り組みも、こうした政策の方向性と重なっています。
国の補助事業に採択された意味
2026年10月9日、CIAJは、総務省の「国際海底ケーブルの多ルート化によるデジタルインフラ強靱化事業」に関する間接補助事業者の採択結果を公表しました。
四国電力は、徳島県阿南市および沖合を実施場所とする事業者として採択されています。
これは、構想を評価するうえで重要な前進です。
国の支援を活用できれば、対象となる設備投資の負担を軽減できる可能性があります。
ただし、採択されたことと、補助金が全額交付されたことは同じではありません。
実際の交付額や、四国電力が最終的に負担する金額は、今後の開示を確認する必要があります。
また、補助対象となる海底ケーブル関連設備と、将来のデータセンター事業への投資は区別しなければなりません。
国の政策が後押ししていることはプラス材料ですが、それだけで事業の採算が保証されるわけではありません。
📊 500億円以上の事業構想と、四国電力が負担する資金
2026年10月31日付の徳島新聞は、今回の構想について、総事業費が500億円以上になる見通しと報じています。
ただし、この金額を四国電力がすべて負担すると考えるのは適切ではありません。
国際海底ケーブルへの出資、徳島への分岐支線、陸上通信網など、投資対象は複数あります。
さらに、国の補助金を活用する計画もあります。
そのため、事業全体の規模と四国電力自身の投資負担を分けて考える必要があります。
四国電力の財務状況から見えること
2026年3月期の連結決算では、次のような数字が報告されています。
| 指標 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 営業キャッシュフロー | 約822億円 |
| 投資キャッシュフロー | 約−1,500億円 |
| フリーキャッシュフロー | 約−677億円 |
| 設備投資額 | 約1,241億円 |
| 社債・借入金 | 約9,272億円 |
※四国電力の2026年3月期決算短信に基づく概数です。フリーキャッシュフローは営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計です。
営業キャッシュフローは、本業の営業活動などから生み出した資金です。
一方、投資キャッシュフローには設備投資などに使った資金が反映されます。
2026年3月期の四国電力は、営業活動で得た資金よりも、投資活動に使った資金が大きい状態でした。
ただし、電力会社は発電所や送配電設備の維持・更新に継続的な投資が必要です。
単年度のフリーキャッシュフローがマイナスだったことだけで、経営状態が悪いとは判断できません。
今回の構想で確認したいのは、新しい通信インフラへの投資を、既存事業の設備投資とどう両立させるかという点です。
四国電力の実際の負担額、投資時期、補助金、資金調達方法が明らかになれば、財務への影響をより具体的に分析できます。
なお、ここで示した財務数値は2026年3月期の実績であり、2026年10月30日発表の中間決算を反映した最新の財務残高ではありません。
🗾 徳島から四国4県へ広がる、新しい産業の可能性
今回の構想は、徳島県阿南市への海底ケーブル陸揚げから始まります。
しかし、四国電力が目指しているのは、徳島だけの通信環境を改善することではありません。
四国内の通信網を整備し、四国全体の産業振興につなげることです。
各県には、どのような変化が期待されるのでしょうか。
| 県 | 期待される変化 | 現時点の留意点 |
|---|---|---|
| 徳島県 | 国際通信拠点の形成、関連設備の建設・保守 | 陸揚局の整備と災害対策 |
| 香川県 | 通信サービスの拡充、企業のデジタル化 | 具体的な進出企業は未確認 |
| 愛媛県 | 脱炭素電源の活用、生成AI向けDC事業 | 事業化・投資採算は未確定 |
| 高知県 | 通信経路の多様化、関連産業の誘致機会 | 通信網の整備範囲は今後確認 |
※徳島の陸揚げ計画と愛媛の検討事業を除き、各県の効果は現時点で想定される可能性です。具体的な施設建設や企業進出が決定したことを示すものではありません。
地域経済への効果は、建設費だけでは測れない
例えば、データセンターの建設が決まれば、建設会社や電気設備会社、通信設備会社などに仕事が生まれる可能性があります。
完成後も、設備の保守や電力供給などの需要が続きます。
さらに、関連する企業が集まれば、地域の産業構造が変化する可能性もあります。
ただし、設備投資額が大きいからといって、そのすべてが地域経済に残るわけではありません。
地元企業がどの程度受注できるか、継続的な雇用がどれだけ生まれるか、税収がどのように増えるかによって、地域への効果は変わります。
また、データセンターは巨額の設備投資を必要とする一方、運用段階では比較的少ない人数で管理される場合もあります。
地域活性化の成果は、建設投資だけでなく、継続的な仕事や関連企業の進出まで含めて考える必要があります。
現時点では、四国4県全体への経済波及効果を金額で示すことはできません。
🏢 北海道・九州とのデータセンター誘致競争
四国がデータセンター誘致を進める一方で、北海道や九州でも関連する取り組みが進んでいます。
北海道では大規模AIデータセンターの建設が進められ、九州でも電力会社や自治体などがデータセンター関連産業の集積を目指しています。
こうした地域と比較すると、四国の特徴と課題が見えてきます。
四国が強みにできる可能性
四国電力は、伊方発電所などの電源を活用した電力供給と、通信インフラの整備を組み合わせようとしています。
電力会社自身が通信環境の改善に関わることで、企業誘致を一体的に進められる可能性があります。
また、徳島への国際海底ケーブル陸揚げが実現すれば、通信経路の多様化にもつながります。
競争力を高めるために残された条件
一方、北海道や九州には、すでに具体的なデータセンター建設や運営の取り組みが進んでいる地域があります。
四国では、国際海底ケーブルの陸揚げや通信網の整備がこれからの段階です。
さらに、データセンターの立地は電力供給だけでは決まりません。
電力価格、通信遅延、建設用地、冷却設備、災害対策、運営費用などが総合的に比較されます。
現時点では、これらを同じ条件で比較した十分な資料を確認できていないため、四国が北海道や九州より有利だと判断することはできません。
今回の構想は、四国の競争力がすでに確立していることを示すものではなく、立地条件を改善するための取り組みと考えるのが適切でしょう。
⚠️ 期待の裏側にある、投資回収と地域環境の課題
今回の構想には、通信インフラ整備、データセンター誘致、新しい電力需要の創出など、複数のメリットが期待されています。
一方で、事業を進めるうえでは慎重に確認したい課題もあります。
企業誘致が進まなかった場合の投資回収
通信インフラを整備しても、十分な利用需要が生まれなければ、投資回収が難しくなる可能性があります。
通信関連事業の収益条件や利用契約の状況は、今後の重要な確認項目です。
電力設備の増強に伴う負担
大規模データセンターが進出すれば、電力供給のために送配電設備などの増強が必要になる場合があります。
電力販売の増加と、追加投資の費用を合わせて評価する必要があります。
冷却設備と水資源への影響
データセンターでは、サーバーから発生する熱を処理する必要があります。
冷却方式によっては、水資源への影響も考慮しなければなりません。
南海トラフ地震などへの備え
徳島の陸揚局や四国内の通信網は、地震や津波などの災害に備える必要があります。
通信経路を分散することには意味がありますが、新しく整備する設備そのものの耐災害性も重要です。
地域によって異なる経済効果
データセンターが特定地域に集中すれば、雇用や税収などの恩恵にも地域差が生まれる可能性があります。
これらは、必ず発生すると決まった損失ではありません。
事業が具体化する過程で、どのような対策や条件が示されるかを確認する必要があります。
📈 現在の四国電力の業績と、将来の成長投資
四国電力は2026年10月30日、2027年3月期の中間決算と通期業績予想の修正も発表しました。
中間期の売上高は4,191億円となり、前年同期比8.9%増加しました。
一方、営業利益は482億円となり、前年同期から181億円減少しています。
売上高が増えた一方で利益が減少した背景には、卸販売の増加などによる収入増に対して、燃料費や購入電力料、人件費などの費用増加があったことが挙げられます。
通期業績予想は、次のように修正されました。
| 項目 | 従来予想 | 修正後予想 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,250億円 | 9,050億円 |
| 営業利益 | 370億円 | 445億円 |
| 経常利益 | 400億円 | 500億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 300億円 | 375億円 |
今回の利益予想の上方修正には、四国電力送配電における託送料金の見直しに伴う収支改善などが関係しています。
海底ケーブル構想やデータセンター事業から、すでに利益が生まれたという意味ではありません。
現在の業績を動かしている要因と、将来の成長を目指す投資は、時間軸が異なります。
今回の構想が業績にどのような影響を与えるかは、今後の事業進捗を確認していく必要があります。
🔍 新構想を企業価値につなげるための条件
今回の構想が四国電力の企業価値を高める可能性はあります。
しかし、現時点では投資負担額や収益見通しが明らかになっていないため、利益への貢献額を計算することはできません。
今後は、構想がどの段階まで進んでいるかを順番に確認すると、変化を捉えやすくなります。
通信インフラの整備 → 利用契約の獲得 → データセンター誘致 → 電力販売の増加 → 利益への貢献
これは、成果を観察するための一つの考え方です。すべてが予定どおり進むことを保証するものではありません。
また、株価は新構想だけでなく、既存の電力事業の業績、燃料価格、金利、配当、設備投資などの影響も受けます。
新しい成長戦略が魅力的であっても、その期待がすでに株価に織り込まれている場合もあります。
今後の確認ポイント
| 確認項目 | 分析上の意味 |
|---|---|
| 海底ケーブル整備の進捗 | 計画の実行状況 |
| 四国電力の投資負担額 | 財務への影響 |
| 補助金の交付額 | 実質的な投資負担 |
| 通信関連の利用契約 | 通信事業の収益化 |
| データセンターの進出決定 | 新しい電力需要の具体化 |
| 電力供給契約 | 電力販売への貢献 |
| データセンター事業の収支計画 | 新事業の採算性 |
こうした情報が少しずつ明らかになれば、今回の構想をより具体的に評価できるようになります。
🌱 電気を売る前に、電気を使う産業を育てるという発想
今回の四国電力の取り組みを振り返ると、企業の成長戦略には、少し違った見方があることに気づきます。
通常、電力会社は地域の家庭や企業が必要とする電力を供給します。
しかし、今回の構想では、電力を大量に必要とする企業が進出しやすい環境を整えることが、経営戦略の一部になっています。
そのために取り組もうとしているのが、国際海底ケーブルと通信ネットワークの整備です。
一見すると本業から離れた投資ですが、将来の電力需要を生み出すための土台づくりと考えると、その狙いが理解できます。
ただし、通信インフラの整備から実際の利益が生まれるまでには、いくつもの段階があります。
通信環境が整うこと。
データセンターが進出すること。
電力供給契約が成立すること。
そして、販売量の増加が利益につながること。
それぞれの段階で、確認すべき条件が異なります。
事業構想の魅力と、投資としての採算性を分けて考えること。
今回のニュースから得られる大きな学びは、ここにあるのではないでしょうか。
🌸 まとめ|四国電力の新戦略は、四国の未来を変えるか
四国電力が発表した「四国デジタルゲートウェイ構想」は、国際海底ケーブルへの参画と通信網整備を通じて、四国へのデータセンター誘致を進める取り組みです。
その狙いは、通信インフラを整備すること自体にとどまりません。
データセンターなどの産業が進出しやすい環境をつくり、新しい電力需要と地域経済の活性化につなげようとしています。
国際海底ケーブル事業への参画や国の補助事業への採択は、構想が具体化した前進です。
一方、通信関連事業の収益、データセンター誘致、電力販売の増加、投資回収については、まだ確認すべき点が多く残っています。
そのため、現時点で四国電力の利益がどの程度増えるかを判断することはできません。
それでも、今回の構想には注目すべき特徴があります。
四国電力は、電力需要の増加を待つのではなく、電力を必要とする産業が育つ環境を自ら整えようとしています。
電気を売るために、まず通信環境を整える。
この一見遠回りに見える投資が、将来の成長につながるのか。
2029年度中を目標とする国際海底ケーブルの運用開始に向けて、構想が実際の契約や収益へと変わっていく過程を、継続して確認したいと思います。
🌸 J-SCFI 継続観察ポイント
- 海底ケーブルと四国内通信網の整備進捗
- 四国電力の投資負担額と補助金の交付状況
- 通信関連事業の契約・収益条件
- データセンターの進出企業と建設計画
- 新規電力供給契約と販売電力量
- データセンター事業の収支計画
- 四国4県への経済波及効果と地域環境への影響
※本記事は2026年10月31日時点の公表情報を基にした投資学習用の解説です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
参考資料

